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特定技能 農業の受入れ要件と手続き|仕事の範囲・派遣・2号の条件

特定技能 農業の受入れ要件と手続き|仕事の範囲・派遣・2号の条件

特定技能「農業」で外国人を雇う前に知るべき、任せられる仕事の範囲、受け入れる農家の条件(雇用経験と協議会)、派遣の使い方、試験と技能実習からの移行、手続きの順番と届出の期限を公的資料をもとに解説します。

農業で外国人を雇うとき、特定技能の決まりを知らずに進めると、申請の前で止まります。例えば、過去5年以内に6か月以上人を雇った経験がない農家は、そのままでは受け入れられません。農業特定技能協議会(農林水産省が置く、受け入れる側が入る組織)に入っていないと、申請書類もそろいません。

押さえることは3つです。

  • 受入れ側の条件は雇用経験と協議会
  • 任せられる仕事は耕種か畜産が中心
  • 1号は通算5年、2号なら長く働ける

この3つを押さえると、申請のやり直しや、任せてはいけない作業をさせてしまう違反を防げます。この記事では、制度の全体像から派遣の使い方、手続きの順番、よくある失敗までを説明します。

この記事は、出入国在留管理庁・厚生労働省などの公的資料を2026-11-08時点で確認して書いています。農業分野の担当は農林水産省で、細かな基準は法務省と農林水産省の運用要領(制度の運用ルール集)にあります。

ここがポイント

特定技能「農業」は、耕種農業と畜産農業の2区分で外国人を雇える制度です。受け入れる側には、6か月以上の雇用経験と農業特定技能協議会への加入が求められます。1号は通算5年まで、2号に進めば5年の上限なく働けます。農業は派遣での受入れも認められ、繁忙期だけの人手にも使えます。

特定技能「農業」とは|耕種・畜産の2区分で1号は通算5年

特定技能(人手不足の分野で外国人が働くための在留資格)は、2026年1月にリネンサプライ・物流倉庫・資源循環が加わり、全部で19分野あります(物流倉庫と資源循環は、準備が整いしだい受入れが始まる予定です)。農業はその1つで、2号(より熟練した人向けの区分)の対象にもなっています。農業が2号の対象になったのは、2023年6月9日の決定からです。

特定技能 農業の図解
特定技能 農業の図解

農業分野の仕事は、耕種農業全般と畜産農業全般の2つに分かれます。耕種は野菜や果物、米などを育てる仕事、畜産は牛や豚、鶏を育てる仕事です。どちらで受け入れるかで、本人が受ける試験も変わります。

項目特定技能1号特定技能2号
技能の確認1号農業技能測定試験に合格2号農業技能測定試験に合格+実務経験
日本語の確認日本語基礎テストか日本語能力試験N4以上日本語試験の定めなし
在留できる期間1回に3年以内(法務大臣が個々に指定)、通算で原則5年まで(2号の試験に不合格でも合格基準点の8割以上などの条件を満たせば6年まで)3年・2年・1年・6か月のいずれか
任せられる仕事耕種か畜産の現場作業現場作業に加えて管理業務
支援計画必要求められない

1号で働ける期間は、分野をまたいでも通算5年までです。5年を超えて働いてもらうには、原則として2号に進んでもらう必要があります。ただし、2号の試験に不合格でも、2号に必要な試験すべてで合格基準点の8割以上を取り、引き続き合格を目指すことなどの要件を満たせば、通算6年まで在留が認められる場合があります。2号には、1号のような通算5年の上限の定めがありません。

農業分野では、2024年度からの5年間で最大7万3,300人を1号で受け入れる上限としています(2026年1月23日の閣議決定)。背景には、2028年度に38万9,000人程度の人材が不足するという見込みがあります。

特定技能農業で任せられる仕事|主作業に加え関連作業6種類

主な仕事は、耕種なら栽培管理と農産物の集出荷・選別、畜産なら飼養管理と畜産物の集出荷・選別です。2号の方は、これに加えて作業の管理業務も担えます。請け負った農作業も含まれます。

雇う側は、農家や農業法人だけではありません。JA(農業協同組合)や酪農ヘルパー利用組合など、農業者でつくる団体でも受け入れられます。農作業を請け負うコントラクター組織も同じです。

関連業務:日本人も普段行う作業なら付随的に任せられる

同じ職場の日本人が普段から行う関連業務なら、付随的に任せてかまいません。ただし、関連業務だけをさせることは認められません。認められる関連業務の例は次の6種類です。

関連業務の例条件
農畜産物の製造・加工自分の農場で作った農畜産物を原料の一部に使う
副産物を使う製造・加工稲わらや家畜排泄物など、自分の農場の副産物を使う
農畜産物の運搬・陳列・販売自分の農場の農畜産物が含まれている
加工品の運搬・陳列・販売自分の農場の農畜産物を原料の一部に使った加工品
副産物の加工品の運搬・販売自分の農場の副産物を原料の一部に使った加工品
その他日本人が普段行う作業複合経営で別区分の作業をする場合や、冬場の除雪など

労働時間:農業は適用除外でも管理は必要

農業では、労働時間・休憩・休日に関する労働基準法の規定が適用除外です。それでも、過重な長時間労働にならないよう労働時間を管理し、休憩と休日を適切に設けなければなりません。深夜割増賃金など、それ以外の規定は適用されます。

特定技能農業の受入れ要件|雇用経験6か月以上と協議会加入

受け入れる側には、全分野に共通の条件に加え、農業だけの条件があります。共通の条件の代表は、日本人と同等以上の報酬です。農業だけの条件は、次の表のとおりです。

農業だけの条件内容
雇用経験過去5年以内に、同じ労働者を6か月以上続けて雇った経験(技能実習生を含む)
準ずる経験過去5年以内に、6か月以上続けて労務管理の業務に就いた経験でも可
協議会への加入農業特定技能協議会に、在留の申請より前に加入
協議会への協力情報提供や調査などに協力する。協力しないと受入れができない
支援の委託先登録支援機関に頼むなら、協議会に協力する機関に限る
実務経験の証明本人から求められたら、実務経験を証明する書面を渡す

雇用経験:人を雇った経験がない農家は準ずる経験を確認する

過去5年以内の雇用経験がなくても、準ずる経験があれば認められます。例えば、親の農業経営のもとで労務管理をしていた子や、農業法人で労務管理を担当した従業員が独立する場合です。迷うときは農林水産省か地方農政局に確認してください。

協議会:費用はかからず、加入通知書まで約2週間

農業特定技能協議会は農林水産省が置く組織で、入会費や年会費はかかりません。加入を申し込むと、通常は申請日からおおむね2週間で加入通知書が届きます。

加入すると、所在地の都道府県を管轄する地域協議会の構成員にもなります。申込み先は農林水産省の特定技能のページにあります。

特定技能農業の派遣|派遣元は4種類に限られる

特定技能で派遣が認められている分野は、農業と漁業だけです。農業で認められた理由は、冬は農作業ができないなど季節の繁閑があり、作目ごとに収穫や定植のピークが違うからです。農繁期だけの人手や、複数の産地で人を融通する使い方ができます。

ただし、誰でも派遣元になれるわけではありません。派遣元(派遣会社)は、次の4種類のいずれかに当てはまる必要があります。

  • 農業か農業に関連する業務を行っている者(農業経営者、JA、農業者の事業協同組合など)
  • 地方公共団体か上の者が、資本金の過半数を出資している会社
  • 地方公共団体の職員か上の者の役員などが役員に入り、業務の執行に実質的に関わっている会社
  • 国家戦略特別区域法に基づく特定機関(国家戦略特区で、農業の外国人材を派遣する事業者として認められた機関)

派遣先になる農家にも条件があります。過去5年以内に6か月以上続けて人を雇った経験があるか、派遣先責任者講習などを受けた人を派遣先責任者に選んでいることです。派遣元が適当と認められる期間は3年間で、過ぎたら改めて確認を受けます。

注意

派遣で受け入れる場合でも、派遣先の農家には農業特定技能協議会への協力が求められます。派遣元任せにせず、任せる作業の範囲と労働時間の管理は自分の農場の責任と考えてください。

特定技能農業の人材要件|試験2つ合格か技能実習2号修了

1号で雇える人は、技能試験と日本語試験の両方に合格した人か、農業の技能実習2号を良好に修了した人です。試験は耕種と畜産で分かれています。

確認するもの試験で証明する場合技能実習2号を良好に修了した場合
技能1号農業技能測定試験(耕種か畜産)農業の技能実習2号なら免除
日本語国際交流基金日本語基礎テストか日本語能力試験N4以上職種を問わず免除

技能実習からの移行:耕種3作業と畜産3作業が対象

技能試験が免除になる技能実習は、耕種農業なら施設園芸、畑作・野菜、果樹、畜産農業なら養豚、養鶏、酪農です。耕種の技能実習を終えた人は、作業が違っても耕種農業全般で働けます。畜産も同じ扱いです。

日本語試験は、農業以外の職種の技能実習2号を良好に修了した人も免除になります。一方、技能試験の免除は農業の技能実習を終えた人に限られます。

2号の条件:試験合格に加えて2年か3年の実務経験

2号は、2号農業技能測定試験の合格に加えて実務経験が要ります。複数の従業員を指導しながら作業し、工程を管理する立場で2年以上か、農業の現場で3年以上です。実務経験は試験の受験時に確認されます。

受入れ側には、本人から求められたら実務経験を証明する書面を渡す義務があります。1号で働く人が将来2号を目指すなら、どの作業をいつから担当したかを記録しておくと役立ちます。

特定技能農業の手続き|協議会加入から届出まで7ステップ

  1. 受入れの条件を確認する。 過去5年以内の雇用経験があるか、準ずる経験で足りるかを確かめます。
  2. 農業特定技能協議会に加入する。 在留の申請より前に加入が必要です。加入通知書まで約2週間を見込みます。
  3. 雇う人を決め、試験合格か技能実習2号の修了を確認する。 耕種と畜産のどちらの区分かも確認します。
  4. 雇用契約を文書で結ぶ。 職務内容を明確に書き、報酬は日本人と同等以上にします。
  5. 1号なら支援計画を作る。 事前ガイダンス、空港の出迎え、住居の確保、生活オリエンテーション、日本語学習の支援、相談対応などを決めます。自分で行うか、登録支援機関(支援を代行する登録済みの会社)に委託します。
  6. 地方出入国在留管理局に申請する。 協議会の構成員であることを示す書類と、農業分野の誓約書を添えます。
  7. 働き始めたら届出を行う。 ハローワークへの外国人雇用状況の届出と、出入国在留管理庁への定期届出(年1回)・随時届出(事由から14日以内)です。

特定技能農業の注意点|よくある失敗は3つ

失敗1:関連業務だけをさせて、認められた活動から外れる

加工場や直売所の仕事ばかりを任せると、特定技能で認められた活動から外れます。関連業務は、耕種か畜産の主な作業に付随する範囲に限ります。判断は、在留期間中の活動全体で行われます。

失敗2:協議会への加入が申請に間に合わない

協議会への加入は、申請より前に済ませる必要があります。加入通知書は、2回目以降の受入れでも使います。繁忙期から逆算して、早めに加入手続きを進めてください。

失敗3:届出を忘れて罰則の対象になる

ハローワークへの外国人雇用状況の届出は、全ての事業主の義務です。怠ったり偽ったりすると、30万円以下の罰金の対象になります。期限は、雇用保険に入る人なら雇入れの翌月10日まで、入らない人なら翌月末日までです。

注意

出入国在留管理庁への届出も別に必要です。定期届出は2025年4月1日以降は年1回、雇用契約の変更や終了などの随時届出は、事由が生じた日から14日以内です。

よくある質問

技能実習生を雇っています。育成就労に変わると特定技能はどうなりますか

育成就労制度は2027年4月1日から運用が始まり、技能実習制度は発展的に解消されます。特定技能制度は続き、農業は農林水産省が所管する育成就労の6分野の1つです。農業育成就労協議会も2026年6月25日に設置されています。

家族経営で従業員を雇ったことがありません。受け入れられますか

過去5年以内に6か月以上の雇用経験がないと、そのままでは条件を満たしません。ただし、過去5年以内に6か月以上労務管理の業務に就いた経験があれば認められます。どちらも無ければ派遣という道もありますが、派遣先にも講習受講などの条件があります。

特定技能の人を何人まで雇えますか

農業分野の運用方針に、1つの農場あたりの人数の上限は書かれていません。上限は1つの農場ごとではなく分野全体の枠で、特定技能1号は2024年度からの5年間(2028年度末まで)で最大7万3,300人です。ただし、同等以上の報酬や労働時間の管理などの条件は、人数にかかわらず守る必要があります。

まとめ

特定技能「農業」は、耕種農業と畜産農業の2区分で外国人を雇える制度です。1号は通算5年まで、2号に進めば5年の上限なく働いてもらえます。農業は派遣も認められ、繁忙期だけの人手にも使えます。

受け入れる側の条件は、過去5年以内に6か月以上の雇用経験と、農業特定技能協議会への加入です。任せる仕事は耕種か畜産の主な作業が中心で、関連業務は付随的な範囲にとどめます。労働時間の管理と、日本人と同等以上の報酬も欠かせません。

手続きは、条件の確認、協議会加入、人材の確認、契約、支援計画、申請、届出の順に進めます。制度は改正が続いており、2027年4月には育成就労制度も始まります。申請の前に、農林水産省と出入国在留管理庁の最新資料を確認してください。

この記事のまとめ

  • 耕種と畜産の2区分。1号は通算5年、2号は試験に加え実務経験2年か3年
  • 受入れ側は6か月以上の雇用経験と協議会加入。派遣元は4種類に限る
  • 届出を忘れると罰則。協議会加入は申請前、届出は年1回と14日以内

出典・参考にした公的資料

制度は改正されることがあります。手続きの前には、必ず最新の公的情報をご確認ください。